東日本大震災で全村避難を経験した飯舘村は、ふるさとの再生へ、総力戦で一つひとつの課題に向き合ってきました。その道のりに想いを寄せ、あるいは新たな可能性を見出して、色とりどりの活動を展開してきたのが地域おこし協力隊の皆さんです。
「つなぐNOTE」は、地域おこし協力隊の隊員の皆さんの視点から、それぞれの活動の軌跡と飯舘村での暮らしについてお伝えします。
今回は、フリーミッション型地域おこし協力隊として、菓子工房「Cocitto(コチット)」を営む髙橋洋介さんに、協力隊を目指した時のこと、これまでの活動の軌跡、飯舘暮らしの魅力などについてお聞きしました。
髙橋さんが地域おこし協力隊になった訳
髙橋洋介さん。菓子工房Cocittoの厨房にて
かつては東京都で、営業職の仕事に就いていました。学生時代に菓子工房でアルバイトをした経験があり、仕事で都内を飛び回る中で、さまざまな名店の菓子を食べ歩いていました。
「そろそろ地元に」と考えて、福島にUターンしたのが令和4年。「いいたて村の道の駅までい館」で仕事をすることになり、そこで出会ったのが、個性豊かな飯舘村の食材でした。また、周囲の人の「飯舘らしい素敵なお土産があれば…」という声を聞き、これらの食材を活かして、加工施設「まごころ」で、パウンドケーキの試作をするようになりました。
そして令和5年、洋菓子ブランドCocitto(コチット)を立ち上げました。
Cocitto(コチット)は、古語の「東風(こち)」と「苞(つと)」を組み合わせた造語です。東風は東から吹く風。苞は藁で包んだものを指し「土産」の意味があります。食材の魅力や背景にある物語をぎゅっと詰め込んだ菓子をつくり、福島発の贈り物として、いずれは首都圏にも届けたいと考えています。
菓子づくりが本格化し、自宅を改装した村外の工房で製造をしていましたが、飯舘村でこのブランドを育てたいと考え、飯舘村地域おこし協力隊に志願。2度目の挑戦で採用され、令和6年に着任しました。
美しい村の菓子工房で発見のある菓子をつくっていく
ビジョンを掲げその実現に一歩一歩進んでいます
協力隊として活動をスタートし、村内に工房をつくる準備をしながら、イベントへの出店やキッチンカーでの移動販売を行いました。
飯舘村の食材のよさやおいしさを再発見できるような菓子をつくりたいと考え、ナツハゼ、イチゴ、カボチャの「いいたて雪っ娘」などを使ったレシピの開発も続けています。また、オーソドックスなケーキや焼き菓子もラインアップに加え、商品数を増やしています。
店舗については、協力隊の卒隊に合わせて開店しようと計画していましたが、新築の建物でテナントの募集があり、そこに店舗兼工房を置くことになりました。急ピッチで準備を進め、菓子製造の許可が降りて、令和6年秋にプレオープン。翌春のグランドオープンに向けて、さらに準備を進めています。
店舗とつながる工房で菓子づくりに日々向き合います
暮らして感じる飯舘村のこと
菓子工房Cocittoの店舗は、草野地区にあります。すでに何度も通ってくださるお客様もいて、ありがたく思っています。
どれもおいしくお土産としても好評な焼き菓子
飯舘村は、「日本で最も美しい村」連合に加盟しています。一方「フランスの最も美しい村」に認定されているペルージュは、美食の都リヨンに近い、丘の上にある小さな村です。人口が激減した後に再生して観光地となり、ペルージュ風ガレットという名物でも知られています。私はこのべルージュが、飯舘村によく似た背景を持っていることから、そのイメージを取り入れた店舗の改装を考えています。
フランスの田舎では、菓子店が惣菜も販売しているので、Cocittoにもいずれ、キッシュやケーク・サレ、パンなども置けたらいいなと思っています。お客様のニーズを捉えながら、進めていこうと思います。
また、Cocittoが面する県道原町川俣線沿いには、道の駅や「ふかや風の子広場」があり、令和7年にはドラッグストアもオープンします。村の皆さんはもちろん、村を訪れる皆さんにも立ち寄っていただける場所の1つになっていきたいと思います。ご来店いただいた皆さんには、飯舘村のよさを再発見しながら、菓子を楽しんでいただければ幸いです。
飯舘村地域おこし協力隊になろう!
飯舘村は、髙橋さんのように「フリーミッション型協力隊」を募集しています。任期は3年間。募集の詳細については、下記フォームよりお問い合わせください。