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2024.07.23

【つなぐNOTE#1】地域おこし協力隊OG-松本奈々さん

つなぐNOTE#1地域おこし協力隊OG松本奈々さん

東日本大震災で全村避難を経験した飯舘村は、ふるさとの再生へ、総力戦で一つひとつの課題に向き合ってきました。その道のりに想いを寄せ、あるいは新たな可能性を見出して、色とりどりの活動を展開してきたのが地域おこし協力隊の皆さんです。

「つなぐNOTE」は、地域おこし協力隊の隊員の皆さんの視点から、それぞれの活動の軌跡と飯舘村での暮らしについてお伝えします。
第1回は、2019年から2022年にかけてフリーミッション型の協力隊員として活躍し、現在は合同会社MARBLiNGの共同代表として、複合施設「図図倉庫」を拠点に活動する松本奈々さん。協力隊を目指した時のこと、これまでの道のり、飯舘暮らしの魅力について、奈々さんに執筆していただきました。

新しい土地で自分に何ができるのか、模索したかった

私が飯舘村に地域おこし協力隊として移住したのは2019年のことで、その前は新卒で入社した東京のIT企業に勤めていました。憧れていた大都会暮らしに満足していないわけではありませんでしたし、仕事もとてもやりがいはあったのですが、2年ほど働いた頃に「この先ずっとここでこの仕事を続けて生きていくんだろうか」と思い悩むことが増えるようになりました。

おそらくその仕事が、自分が何をしたいのかもよくわからないまま、とりあえず「今を生きるため」や「将来の安定」のために選んだ仕事だったからかもしれません。そのまま体調を崩して会社を辞め、1年ほどブランク期間を過ごしながら少しずつローカルな地域や海外などを訪れてみている中で、それまで住んだことのないような全く新しい土地で自分に何ができるのかを模索してみたいという思いが生まれてきました。

その頃私がファームステイをしていた農家さんのお宅に、ちょうど遊びに来ていた復興支援員の方が飯舘村の協力隊募集情報を教えてくれ、すぐに面接を受け協力隊としての活動をスタートしました。

飯舘村初の地域おこし協力隊として就任した奈々さん。卒業後も飯舘村で活動しています

村の生活にもだいぶ馴染んできた協力隊2年目の頃、震災以降使われないままで取り壊し寸前になっていた元ホームセンターの建物を誰か活用してほしいという話を聞きました。飯舘で知り合った知人と手を組んで、その建物をお借りできるよう交渉し、図図倉庫(ズットソーコ)という「地域環境づくり」をテーマにした交流ハブ空間をつくるプロジェクトを立ち上げ、協力隊を卒業した現在まで継続しています。

気軽に立ち寄れるカフェ・ショップの運営や地域の方向けのイベントなども行いつつ、ちょっと難しい放射能のことをわかりやすく噛み砕いて説明しながら村内を巡るツアーコンテンツ運営や、水耕栽培実験を行う企業さん・飯舘の環境観測を行うNPOさんなどへのスペース貸し事業などをおこなっています。
飯舘村に5年ほど住んでみて、昔からの伝統芸能や農業の技術、常に自然と寄り添い合って暮らす感覚など、人間として絶やしてはいけないものがたくさんあるなあと実感する毎日です。そういった、地域のコミュニティの中でずっと守られてきたものも含めて「地域環境」と捉えて、大切に次の世代に引き継いでいきたいという思いで活動中です。

元ホームセンターを改修した複合施設「図図倉庫」

地域課題を先取りしている村。
一方で多様な関わりが生まれている

飯舘村は、環境課題や急激な高齢化、人口減少など、他の小さな市町村にも当てはまるような課題を一気に先取りしているような村ですが、だからこそいろんな側面が生まれている部分もあると感じます。
大自然の中で、昔から続く農林畜産業や食文化を守る取り組みをする地元の方がいたり、東京からの通いで土壌や作物の放射線測定や農地の再生などの環境研究を村の方と協働でやっている方がいたり。学生さんにとってはフィールドワークの拠点となり、コミュニティづくりや食・農学系の研究活動などで図図倉庫も含め何年も村に通ってくださっている方もいます。
「自分たちも避難の時によそ者になったから、移住者の気持ちがなんとなくわかるんだ」と村の方から時々耳にすることがあります。私が移住してきた時もみなさんとてもフレンドリーで温かく、おかげで早く村の暮らしに慣れることができました。今ではだいぶ移住者も増え、近隣市町村との交流も盛んになってきているので、きっと気の合う人に出会えるんじゃないかと思います。
ただ、どうしても立地の面で車がないと生活が難しく、日常の買い物や病院なども隣町に行かなければいけないこともあるので、飯舘村移住に興味のある方はぜひ一度1週間くらい滞在してみると実際に生活したときのイメージが湧くのではないでしょうか。

テナントが入居する他、小さなカフェやコワーキングスペース、イベントスペースなども備える

移住は「自分がやりたいことのため」という動機で十分

飯舘村は立地的に集客も難しく、さらに震災・原発事故の影響による人口減少や農地維持の問題など課題が多い環境ですが、そんな場所でこそ何かをやってみたいという好奇心旺盛な人が自然と村に居続けている気がします。協力隊としての移住や、困難を経験した地域への移住というのは少しプレッシャーに感じてしまいがちですが、まずは「自分がやりたいことのため」という動機で十分だと思います。もちろん住民の方や近くで関わる方たちへの配慮はしつつですが、自分の得意なことや好きなこと、チャレンジしてみたいことを思う存分できる環境かどうかという視点で飯舘村を見てみるといいかもしれません。
また、地域おこし協力隊には原則3年間という任期があります。私の場合、着任当初はあまり卒退後のことまで深く考えてはおらず、なんだかんだで良い出会いにも恵まれ、今はありがたいことに協力隊時代の活動を引き継ぐような形で村内で事業をさせていただいていますが、これから協力隊を目指す方はぜひ、ぼんやりでもいいので3年後の自分の姿をイメージしておくのがおすすめです。

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