2024.11.24
【つなぐNOTE#4】飯舘村地域おこし協力隊-横山梨沙さん
東日本大震災で全村避難を経験した飯舘村は、ふるさとの再生へ、総力戦で一つひとつの課題に向き合ってきました。その道のりに想いを寄せ、あるいは新たな可能性を見出して、色とりどりの活動を展開してきたのが地域おこし協力隊の皆さんです。
「つなぐNOTE」は、地域おこし協力隊の隊員の皆さんの視点から、それぞれの活動の軌跡と飯舘村での暮らしについてお伝えします。
今回は、フリーミッション型地域おこし協力隊として「コーヒーポアハウス」を営む横山梨沙さんに、協力隊を目指した時のこと、これまでの活動の軌跡、飯舘暮らしの魅力などについてお話を伺いました。
横山さんが地域おこし協力隊になった訳
私は福島市の出身です。進学した東京で就職し、会社員として働いた後に、「ワーキングホリデー」の制度を利用しオーストラリアのメルボルンに向かいました。もともと海外で暮らしてみたいと考えていて、その時たまたま選んだ仕事が「コーヒー」だったのです。
慣れるまでは英語で話すこと自体が大変でしたし、外国人として現地のコミュニティの中で働く難しさもありましたが、「行ってよかった」と実感しています。そこで学んだことが、今の仕事につながっているのですから。
メルボルンには個人経営のコーヒー店がたくさんあって、テイクアウトをするお客さんは、タンブラーを持参したり、ノーリッド(フタなし)を選択したり、環境への意識がナチュラルに高いと感じていました。
帰国後は東京のカフェで働き、その後、福島に戻って「お店を持たないコーヒー屋」になりました。スペースを借りて期間限定で出店したり、既存の店舗でラテアートのワークショップを開いたりしていて、やがて自然に「お店を持てたらいいな」と思うようになりました。
その頃、私のワークショップに来てくれた飯舘村地域おこし協力隊の二瓶麻美さんと親しくなりました。「お店を持てたらいいな」という私の思いに応えて、「飯舘村ではどう」と誘ってくれたのが、二瓶さんです。
全国各地で協力隊を募集していますが、飯舘村のフリーミッション型協力隊は自由度が高く、「コーヒー」をやることが地域おこしにつながる、それなら私も飯舘村で始めてみようと一歩を踏み出しました。
食べて話して、よい1日になりますように
地域おこし協力隊となって1年、準備期間を経て、水・木・金曜日にランチを提供する『コーヒー屋の食堂』をオープンしました。
日替わりのランチは、メインの料理に野菜たっぷりの副菜を添えて。ご飯、味噌汁、副菜は、食べきれる量で、自分好みに取り分けてもらっています。食材は、なるべく村でつくられたものを使い、体に悪いものは極力避けるように心がけています。
また、『CoffeePourHouse』として営業するカフェタイムには、コーヒーを中心に、季節に合わせたさまざまなドリンクも提供しています。
「ここに来れば食べられるし、話もできる」と足を運んでいただける、そんな場所にできたらいいなと思っています。訪れた方が「今日はいい1日だったな」と感じてくださったら、本当にうれしいです。
ことさらに掲げているわけではありませんが、「人にやさしく」がコンセプトにあります。そして、ありがたいことに、たくさんの「やさしい人」が来てくださいます。常連さんが多いこともあると思いますが、席を譲り合ったり、当たり前のように食器を下げたり、初めての人に説明をしたり、「味噌汁がなくなりましたよ」と声をかけてくれたり。お店の人にギブ(提供)してもらうのが当然という風潮の中、ここにはそんなやりとりがあふれています。
暮らして感じる飯舘村のこと
1回来てみれば、この村のよさが、自然に感じられるのではないでしょうか。東京で一人暮らしをしていた時とは違って、すごく気軽にご近所付き合いができています。田舎に移住をしたらよそ者扱いされないかと不安に感じる方もいると思いますが、それに関しては全く心配ありません。そこがすごくいいところです。みんな、とてもやさしいです。
そして実は、「何もない」ことも、よさの一つだと思っています。都市部で暮らしていると情報も人も多くて、必要のない情報に振り回されたり、無意識に人と比べてしまったりしがちです。余計なことを考えなくていい「何もない」は、素敵なことでもあるのです。スーパーのある町まで20分ほどかかりますから、買い忘れには要注意ですが(笑)