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「いいたてクリニック」は飯舘村内で唯一の医療機関です。村が施設を整備し、社会医療法人秀公会(福島市)に運営を委ねる公設民営方式で、平成22年(2010年)に診療を開始しましたが、その翌年3月に東日本大震災と福島第1原発事故が発生。村は計画的避難区域になり、全村避難を余儀なくされました。
避難指示は29年3月に長泥地区を残して解除されましたが、帰還に備えて始まった住民の長期宿泊に伴い、クリニックも26年9月に診療を再開しました。
現在、外来診療は火曜日の午前8時30分~受付午後4時と木曜日の午前8時30分~午後0時30分(受付は午前11時30分まで)だけですが、村内に移住して令和4年(22年)4月から勤務する本田徹医師は月・水・木の週3回、患者の自宅へ定期的に出向く訪問診療を行っています。週末休日も、けがや体調悪化などの連絡があれば、緊急に駆けつけることもあります。
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また、いいたて福祉会(理事長は杉岡誠村長)が運営する特別養護老人ホーム「いいたてホーム」の入居者の健康維持、投薬、往診なども本田さんが担当しており、必要に応じ最期の看取りも行っています。
6年間の全村避難を経て、村内に実際に住む人の数は被災前の4分の1にあたる約1500人に減り、高齢化も一気に進みました。中堅・若手世代の帰還が高齢者ほど進んでいないためです。お年寄りのご夫婦だけ、あるいは一人暮らしの世帯も少なくありません。
運転免許を持っていない人や高齢のため免許を返納した人など、生活上の不便と不安を抱えている人が多く、その暮らしをどう支えるかが大きな課題です。村は社会福祉協議会に委託して通院や買い物をサポートする事業を行っていますが、自宅に来てくれる「かかりつけ医」がいれば、それ以上に心強いことはありません。
本田さんは若いころ青年海外協力隊員としてチュニジアで活動し、帰国後は長野県厚生連佐久総合病院に勤務。農村医療の第一人者として知られる若月俊一医師の下で学びました。
診察室で患者を待つのではなく、積極的に地域へ入って住民と触れ合い、生活習慣の改善など予防医療に取り組む若月先生の活動は、日本だけでなく海外でもお手本とされ「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞。著書「村で病気とたたかう」は、地域医療を志す医療関係者のバイブルになっています。
その教えを受け継ぐ本田さんもその後、カンボジアなどでの医療支援を経て日雇い労働者や路上生活者の多い東京・山谷地区で活動し、東日本大震災後はいわき市の労災病院や広野町の高野病院に勤務。生きがいや張り合いを失った避難生活の中で認知症を発症する人が多いなど、被災者を取り巻く厳しい状況を目の当たりにしてきました。
若月先生は、単なる医療技術ではなく看護、介護、リハビリなどと連携して総合的に人の健康を守る「プライマリー・ヘルス・ケア」の重要性を説きました。超高齢社会に入った日本で、特に被災地において、その意義はますます高まっていると本田さんは感じています。
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現在、クリニックには医師のほか看護師、薬剤師、事務員らが、福島市のあづま脳神経外科病院から派遣されています。診療日・診療時間が限られるため飯舘村での常駐勤務は想定されていませんが、運営主体の秀公会は看護職や事務職を募集しており、その勤務先にいいたてクリニックも含まれています。人の健康を支え、それを通じて地域社会を支える本田先生らの思いを共有できる人は、ぜひご検討ください。
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<社会医療法人秀公会 あずま脳神経外科病院>
福島市大森字柳下16-1 TEL:024-546-3911
<いいたてクリニック>
飯舘村伊丹沢字山田380 TEL:0244-68-2277
<本田徹携帯> 080-3395-4392