2025.09.01
【いいたてで働こう】株式会社エムケーファーム
農業は飯舘村の基幹産業です。しかし、その姿は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で大きく変わってしまいました。6年間の全村避難を経て居住人口が大幅に減り、住民の高齢化も一気に進んだからです。農業の担い手確保が地域の復興を進める上でも大きな課題になっています。
そんな中、注目を集める存在が福島市に本社を置く農業法人「株式会社エムケーファーム」です。令和元年(2019年)から飯舘村の臼石地区へ進出し、現在は9棟のハウスでミニトマトを生産しています。
社長の菊野里絵さんは、東京生まれの東京育ち。かつては電力会社に勤務していましたが、祖父母が福島市で果樹園を営んでいたこともあり、農業を志して会社を早期退職しました。飯舘の北隣りにあたる伊達市霊山地区で新規就農し、果物や野菜を栽培していましたが、東日本大震災後に離農。その後、縁あって飯舘の農業復興の一翼を担うことになりました。
ミニトマトに加え、今年の春にはキノコの菌床栽培を始める計画でしたが、コロナ禍による物価高騰の影響で菌床の入手が難しいことと、人材不足もネックで、まだ実現に至っていません。現状では従業員が1人しかおらず、ミニトマトだけで手一杯なのが実情です。マンパワーが確保できれば、新たな分野への道が開けます。
「冬にはキノコ栽培を始めたいと思っているので、新しく来てくれる人にはその勉強をしてほしい。自分で栽培計画を立て、主体的に取り組む意欲と経営感覚のある人を期待しています」と、菊野さんは言います。
構想はキノコだけではありません。同社は飯舘村に進出する際に2.4ha(240a)の農地を取得しましたが、現在栽培に活用している農地は約30aほど。まだまだ使い道のある農地があるので、「栽培してみたい作物があればぜひチャレンジしてほしいです」とのこと。
臼石地区は帰還した住民も比較的高齢者が多く、本格的に営農を再開した農家はわずかです。高齢でも元気な人はいらっしゃいますが「その人たちも、いつかはバトンを手放す時が必ず来る。そのバトンを受け取る人を育てておかなければ」と、菊野さんは口元を引き締めます。
同社が農業の成功事例を作れば、それが呼び水になって若手の新規就農者が増えることも期待できるでしょう。その意味でも、ただ指示通りに働くだけでなく「将来、自分が地域を背負っていくぐらいの気概のある人に来てほしい」というのが菊野さんの願いです。
地域住民とのつながりを大切にし、コミュニティーの中にどんどん入っていけるようなキャラクターも求めています。農業の知識や経験は問わず「働きながら現場の知恵を柔軟に吸収していけるような人がいい」そうです。
飯舘村の美しい景観は、農の営みを通じて維持されてきました。「(震災前と比べて)足りないのは、鍬を振るって土を耕す人。やっぱり田んぼや畑が動いてこその地域ですからね」と話す菊野さん。その思いを共有できる人を、待望しています。
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株式会社エムケーファーム
本社:福島市西中央三丁目26-1 ピアザ西部201
飯舘菅田圃場:飯舘村臼石字菅田11-1
TEL:024-563-6910