「音楽」にがっつり向き合える環境を求めて、周りに人家が少ない「空き家」を探していた木村さん。インターネット上で情報を集め、選んだ候補の一つが、飯舘村比曽地区の物件でした。
木村さんがギターを始めたのは、学生時代。社会人になってからもアコースティックギターの弾き語りを趣味とし、曲を書いていました。そうするうちに「一度真剣に音楽に向き合ってみたい」という思いが募り、3年間の音楽修行を決行するに至りました。
「都会では音の問題がありますし、生活コストもかかります」。木村さんは修行の場を、国内の「人があまりいないエリア」に絞って探していました。比曽地区の物件は、実際に訪れ、周囲の環境を含めて気に入って、令和6年に移住しました。
木村さんは神奈川県の出身です。東京の大学を卒業し、移住前は国家公務員として、愛知県名古屋市で働いていました。退職にあたっては「仕事を辞めずに両方やればいいのでは」という周囲の声もありましたが、両立の難しさを感じていたからこそのシフトチェンジ。自分の中に芽生えた思いを形にして、音楽にがっつり向き合う時間も手に入れました。
ここでは音を気にせず夜中でも音楽に触れていられます
「自転車」も学生時代からの趣味です。北海道を周遊するなど自転車で全国をめぐり、ロードレースにも出場していました。
また、木村さんの傍らにはいつも本があります。「古い日本語に触れるのが好き」で、現在ハマっているのは江戸川乱歩。「文体がかっこいいし、ストーリーもキャッチー。子どもが読んでも大人が読んでも楽しめます」とおすすめです。
豊かな自然に囲まれ、本を読んだり映画を観たり、時には好きなアーティストのライブに出かけたり。木村さんは、じっくりと充電をしながら、音楽を書き溜めていこうと思っています。「3年の間に、自分がいいと思うものを、納得できるものをつくりたい」。
レース出場は休止していますが相棒の自転車も飯館に
「飯舘の暮らしは、とても気に入っています。“住みたい”と思って来ただけのことはあります」と木村さん。「こういう落ち着いた暮らしを求めていて、ようやく実現したなという感じです」
家の周りは開けていて、音を出すことを気にしなくていい環境は快適です。「比曽地区の夜空は、星がひときわきれいです。月明かりも、満月の夜はライトがいらないくらいで、月がこんなに明るかったのかと。改めて気付かされることも多いです」。
読書も大切な時間
近所の人ともほどよい距離感で、地域のことを教えてもらったり、食べる物をいただいたり。「集落に灯りが増えてうれしい」と歓迎されているそうです。飯舘村の皆さんは、新しく入って来た人にも壁をつくらないから、移住をする人も入りやすいと思います」。移住前には、東北に限らず関西以南まで候補の物件を見に行っていたそうですが、「飯舘村が一番フレンドリー」に感じたそうです。
一軒家を借り居心地よくカスタマイズ
移住をして間もなく、情報を得ようと、いいたて移住サポートセンター「3ど°」を訪れた木村さん。そのひと月後に「3ど°」から「アルバイトをしませんか」と声がかかり、「少ない日数でよければ」と引き受けることにしました。現在は、週に数日、「3ど°」で相談員の仕事をしています。「一人でいては分からないことを教えてもらったり、皆さんと話したりすることが勉強になり、日々ありがたく思っています」。
「3ど°」の相談員として移住希望者に寄り添います
まずは音楽修行に邁進する日々となりますが、「ここにある畑で野菜を育ててみたいし、ゆくゆくは狩猟や釣りもやってみたい」と自給自足の暮らしに憧れます。「修行が終わっても住み続けたいと思っています」。
飯舘村で生まれる楽曲が、この地で奏でられ、広く聴かれるようになる日が楽しみです。
飯舘村で音楽を紡ぐ日々を重ねていきます