八木沢地区の自然豊かな山あいに、有限会社「大空ファーム」の農場があります。ここでは現在、神内ファーム二十一株式会社神明事業部が開発した洪宝豚(はんぽうとん)の繁殖が行われています。
「大空ファーム」には5棟の豚舎があります。中でも令和5年に復興事業を活用して増築した豚舎は、最新の機能を備え、高度な技術を要する洪宝豚の繁殖・飼育に活用されています。
洪宝豚は、ハンガリー固有の名品種で、食べられる国宝とも言われる「マンガリッツァポーク」の四元豚。ハンガリーの漢字表記「洪牙利」の洪の字を名称に入れています。
肉質は柔らかく、サラッとした脂に甘味があり、まろやかな味わい。しかもオレイン酸を多く含むヘルシーな豚肉になります。
「マンガリッツァポーク」は、ウーリーピッグ(毛むくじゃらの豚)というニックネームがあり、黒い巻き毛が特徴です。
洪宝豚を開発した神内ファーム二十一株式会社神明事業部は東京都にあり、福島県内の他、北海道や栃木県に大規模な農場を所有しています。
神明事業部代表の高橋義一さんは、20代の頃、福島県内の養豚場で働いていたそうです。飯舘村で進める事業を、福島県の復興にも役立てたいと考えています。
「震災後に福島県産の肉の価格が下がり、それが完全には回復していないこと、いいものをつくっているのに相応しい評価がないことに対して、我々の取り組みが一助になればと考えています。現在は、生産体制を試行中ですが、おいしい豚肉ができています。飯舘村で生まれる子豚を、銘柄豚として押し出していきたいと思っています」。
「大空ファーム」の現地では、5人の職員が働いています。その一人、谷宣春さんは、平成7年からこの豚舎で仕事をしていて、豊富な経験と技術を生かし、新たな銘柄豚の誕生に力を尽くしています。
「いかに健康な豚をつくるか、手を抜かず大切に育てています」。この道一筋の大ベテランが、実直な仕事で愛情深く、洪宝豚の飼育に取り組みます。
「大空ファーム」で75日間育てられ体重30〜35kgに成長した子豚は、その後、栃木県の農場で大きく育てられ、出荷されます。
谷さんは、育てた豚を定期的に購入し味を確かめています。「成分分析もしていますが、実食して味を確かめます。生産者にとって、自分が育てた肉は特別。洪宝豚は甘み、うまみのある脂が特長で、柔らかく、冷めてもおいしい。この洪宝豚の生産を、村に貢献できる事業に育てたいです」。
畜産は365日・24時間体制の仕事ですが、「大空ファーム」では、働きやすい職場環境を整備しようと、「ウィークリー養豚」を進めています。曜日に作業を割り振り、1週間の流れをつくることで、週休を確保し、有給休暇も取れる体制づくりに努めています。