株式会社サガデザインシーズは、平成4年に福島市で設立されたデザイン会社。 「クリエイティブの力で地域の役に立つ」ことをテーマに掲げ、30年余りにわたって、県内の企業や団体、県や自治体の「デザインの仕事」に携わってきました。今では、グラフィックデザイン、webデザインなどの基本事業に加えて、まちづくり、コミュニケーションデザインなどにも事業領域を広げています。
同社はまた、創業当初から飯舘村とつながりを持ち、デザイン会社の視点から村づくりに関わってきました。「飯舘村が課題を捉える力に長けた自治体であり、さらには皆さんが“見せ方”の重要性を感じていたからこそ、つながることができたのだろうと思っています」と話すのは、社長の佐賀達(とおる)さん。「弊社は、飯舘村の “地域デザイン”に携わり、育てていただきました」。※地域デザイン=人々が協働して地域の問題を解決し、より豊かな暮らしを実現していく取り組みなどを指します。
平成23年に発災した東日本大震災と原発事故の影響で、飯舘村は6年にわたる全村避難を経験しました。同社は震災直後から「自分たちにできることで村の力になりたい」と書籍の出版やコミュニティの支援を続けています。
令和2年には、村内伊丹沢地区の空き家を改装して、いいたてオフィスをオープン。より身近な存在として、村内企業のパッケージデザインやパンフレット制作、ブランディングなどに携わり、さらには村内で栽培するホーリーバジルを使ったアロマブランド「SHIRUBE」を立ち上げるなど、幅広い事業を展開しています。
また現在は、移住定住を推進するツアーの設計や移住相談窓口の業務なども担い、本社の社員も村内で仕事をする時間がますます増えています。佐賀社長は「飯舘村の気候や風土、そして何より人が財産だと改めて感じています。かけがえのない魅力は、ポテンシャルでもある。また、地域に課題がありその解決に取り組んでいるからこその発信の仕方、“見せ方”があると思っています」と熱く語ります。
「デザインの仕事には、クライアント (顧客)がいます。そして例えば、集客を目指してイベントのポスターをつくる、ブランディングやイメージアップを期待して会社案内をつくるなどの目的があります。お客様の課題の解決に、デザインを役立てるという仕事です。一方、自治体や官公庁が事業主体の仕事については、デザイナーとして関わるだけでなく、一貫して事業に併走することが増えてきています。共に課題を見つけ、課題を解決していくことが求められるようになってきました。責任が大きくプレッシャーもありますが、与えられた仕事に正直に向き合い、寄り添って進んでいくことを大切にしています」。
いいたてオフィスは村役場にほど近い住宅地にあり、所長の渡部沙織さんを中心に、本社と連携してさまざまなプロジェクトを進めています。「地元の皆さんにいろいろなことを教えていただき、また力も貸していただいて、この地で仕事ができていると思います」と渡部さん。「顔を合わせて話せる距離感、回を重ねて紡いでいくつながりを大切にしています」。ともに歩む中でどんなデザインが生まれていくのか、挑戦の日々に注目です。