2024.06.30
【ミチシル旅レポートvol.1】6/29-30はじめてのミチシル旅「挑戦する村人に出会う旅」
飯舘村の「しごと」「くらし」「子育て」を知る移住検討者向けモニターツアー「はじめてのミチシル旅」。今年1回目となる今回は「半農半Xに触れて、体験して、可能性を感じよう」をテーマに、村の魅力に出会う1泊2日をご案内。6月29日・30日に行われたツアーに同行し、参加者のみなさんと一緒に飯舘村を巡り、村の人たちに話を聴きながら、村での暮らしの一部を体感してきました。
【行程一覧】
1日目
[11:00] 福島駅集合・出発
[12:00] そば打ち体験・昼食・オリエンテーション
[13:30] 地域おこし協力隊OGの『工房マートル』さんを訪ねて
[15:00] 農業体験 ブルーベリー摘み
[16:00] 『農業研修館きらり』見学
[18:00] レストラン『La Kasse(ラ・カッセ)』で夕食
[20:00] 宿泊体験館『きこり』にて就寝
2日目
[8:00] エムケーファーム菊野里絵さんの朝食
[9:00] 布はたき作りワークショップ
[10:00] 移住サポートセンター『3ど°』スタッフによる移住相談会
[11:00] 『いいたて村の道の駅までい館』で買い物
[12:30] 『氣まぐれ茶屋ちえこ』で昼食・振り返りアンケート
[14:00] 飯舘村出発
[15:00] 福島駅着・解散
【1日目】
午前11時、次々に福島駅に集う参加者のみなさん。関東圏を中心に各方面から8名が合流し、いざ出発!バスから見る景色もどう変わるのか?福島駅がある福島市から代表的な観光スポットでもある花見山周辺を通り抜け、次第に景色は青空と田んぼと山々に。バスに揺られること1時間ほどで到着しました。
まずは飯舘村の名物・手打ちそばに挑戦!
お父さんたちのエネルギーに緊張もほぐれ、あっという間に笑顔
最初に降り立ったのは『もりの駅まごころ』。村のお父さんたちがそば打ちの実演で出迎えてくれました。教えてくれたのは佐藤英信さんと松原光年さん。一人ずつそば生地を伸ばしたり、切ったり。参加者も初めてで四苦八苦しながらも、だんだんとそばの形に。ジョークも飛び交いながらのおもしろそば打ち体験に、参加者のみなさんの心もすでにわしづかみです。
みんなで楽しくそば打ちをした後は加工施設でもある「まごころ」の設備を鮎川邦夫さんがご案内してくれました。オーブンなど業務用機器が揃えられており、各種製造許可も取得済み。さらに、加工品などの試作であれば、施設設備を無料で使えるそう。これは飲食を始めたかった方には、願ったり叶ったりの施設なのでは。
そして、お待ちかねの昼食タイム。飯舘村産そば粉を使った打ちたてのそばは、盛りそばと鴨南蛮で。その他お母さんたちが作った天ぷらや漬物、焼きおにぎり、お浸しなどが卓上いっぱいに並びました。食事をしながら村への質問も飛び交います。冬は氷点下にもなる飯舘村。「条件が合えばダイヤモンドダストが見えることもある」との話に、参加者からは驚きの声が沸きあがりました。
ここでオリエンテーリングも兼ねて、参加者やスタッフも自己紹介。飯舘村は人と人の繋がりが濃いのが特徴です。ツアー中はそんな暮らしを体感するべく、村民はもちろん、参加者やスタッフも名前で呼び合い、村民の一員になったような気持ちで過ごしていただきます。「この2日間の体験を通して村のことをより知っていただけたらうれしいです。村民や参加者同士の交流も楽しんでもらえたら」とスタッフ。
また、今年度から新たな試みを実施!”素敵なもの集め企画”として、参加者一人ひとりにカゴを配付。飯舘村で見つけた良いものをたくさん詰め込んで、持って帰ってもらいます。みなさん、どんなものを見つけられるのでしょうか!
村のかわいい花々が散りばめられた心踊るキャンドル工房へ
「まごころ」を後にし向かうは、キャンドル工房を営む『工房マートル』。村の地域おこし協力隊OGの大槻美友さんの工房見学です。林の中に佇む工房は、自然に溶け込んだ可愛らしい古民家。しかし一歩中に入れば、そこはまるでお花畑のようにドライフラワーが飾られ、キャンドルの優しい灯火が作り出す癒しの空間。床や壁などDIYで作り上げたのだそう。
飯舘村はカスミソウやダリアをはじめとする花卉栽培が盛ん。村で暮らして5年になる大槻さんは「村の花をキャンドルに使っています。寒暖差が大きい地域だから花の発色がキレイなんです。私のキャンドルを通じて村を知ってもらえたり、村に訪れるきっかけになったりしたらうれしい」と話してくれました。この場所で活動を続ける理由はもう一つ。村民の”人の良さ”だそう。「おまけしてくれたり応援してくれたりする農家さん、おもしろい移住者の仲間達がいるのも心強いです」。
生活に農業を取り入れながら、好きなことで自分らしく生きるヒントに
工房を後にし、一行はブルーベリー畑へ。畑の管理者である市澤秀耕さんは、村内外のお客さんに愛される『椏久里 珈琲』のマスター。原発事故後、お店は村外に移転させましたが、再び村でブルーベリーを育て、お店のケーキの材料として使っています。「ブルーベリーで農業をやって珈琲屋もやるという、かっこいい農業スタイルを実現させたかった」と市澤さん。
今はちょうど収穫シーズン。早朝からお手伝いの人にも来てもらい、1日10kgほどを収穫しているのだとか。私たちも簡単に収穫のポイントを教えてもらい、いざ畑へ!近くで見ると、想像以上に大粒でした。「ケーキに使える熟した実の見分け方が意外と難しい!」との声や、一粒ずつ摘み取っては口に入れ「摘みたてってこんなに甘くておいしいんだ!」と歓声も上がっていました。
飯舘村での農業の関心が高まったところで、お次は『宿泊体験館 きこり』へ。村の産業振興課農政第一係の齋藤博史係長が待っていてくれました。村は農業の担い手を新しく育てていこうと様々な就農サポートを行っています。そこで案内されたのがピカピカの新規就農者技術習得管理施設『農業研修館きらり』。「ここは農業者を目指す子方を対象に、農業研修を受ける方が滞在できる施設で、ご家族でもご利用いただけるように設計されています」と説明。「農業を学びながらこんなステキなところで泊まれるなんて!」と参加者も驚いていました。
高級な肉にも負けない、丁寧にエイジングされた上質な飯舘牛を味わう
夕食はバスで10分ほどにある村のレストラン『La Kasse(ラ・カッセ)』へ。「若い人たちにも農業や村の美味しい野菜をアピールできるような店にしていきたい」と腕を奮うのは、村にUターンしたオーナーシェフ・佐藤雄紀さんです。今回のメニューは、村の食材をふんだんに使った特製コース。飯舘村は、畜産にも力を入れています。村の畜産農家・山田豊さんが、自身の営む精肉店で自らエイジングしてくれたという経産牛をステーキで提供されました。やわらかく、一口ごとに「おいしい!」のため息が漏れます。「質の良い野菜や肉が手に入るのは、この村ならでは。村の豊かさを感じています」と佐藤シェフ。「フォカッチャのエゴマの風味に驚いた!」「飲食店は他にもあるの?」などテーブルの会話も弾みました。
夜は特別に希望者で蛍を探すお散歩へ。今回泊まる宿泊施設やキャンプ場を含む『村民の森あいの沢』エリアは、運が良ければこの時期、蛍の鑑賞スポットにもなっています。暗がりの中を進むと優しい光が森の中からぽつりぽつりと浮かびあがってきました。空には満天の星空、聞こえるのは心地よい虫の音。原風景の残る村の豊かな自然に圧倒され、時を忘れて立ち尽くす贅沢なひとときを体験できました。
【2日目】
村で採れた野菜をたっぷり使った元気が出る朝ごはん
2日目は村内の農業法人「エムケーファーム」の代表・菊野里絵さんの作る朝ごはんからのスタート。おにぎり3種に、地元の野菜をたっぷり使ったおかず、ビーツとルバーブの色鮮やかなジャムがのったヨーグルト、さらには村のお母さんが仕込んだ味噌を使った味噌汁など、ボリューム満点の品揃えです。菊野さんも東京から飯舘村に移り住んだ移住者の一人。村では農業の会社を経営しつつ、自らも畑に立つ、しかも料理上手のスーパーウーマン!規格外の野菜をおいしくいただけるオリジナルピクルスの商品化にも取り組んでいます。「消費するだけの東京暮らしに疑問を抱き、移住を決めました」との話に共感する参加者も。
移住サポートセンターで”までい”精神を体験
補助金などで村での暮らしも手厚く支援
菊野さんの心のこもった朝ごはんに元気をもらった私たちは、2日目最初の目的地『いいたて移住サポートセンター 3ど°』へ。村の精神”までい”を学ぶべく、地元のお母さんたちによる布はたき作りワークショップに参加しました。教えてくれるのは、三瓶たつ子さんと長正サツキさん。それぞれ好みの布を選んで細めに割いて、竹棒にくくり付けます。「までいとは”心を込めて””丁寧に””最後まで”という意味。使い古しの布でも簡単に捨てないで、最後まで大切に使いなさいと育てられたんですよね」と話してくれました。みなさん和気あいあいと作業を進め、柄の組み合わせや布の長さなど、参加者それぞれの個性豊かな作品が出来上がりました!
お次は『3ど°』スタッフによる移住支援についての説明会。村の概要から手厚い移住に関する補助金制度まで、たっぷり説明してもらいました。参加者からも「住宅の賃貸にも補助金が出るんですか?」「村の暮らしに車は必須ですか?」「法人で農業をされている方はいますか?」など質問が飛び交いました。説明者の『3ど°』スタッフ木村さんも実は村に移住してきたばかり。「自転車が好きだから、アップダウンがある村の地形は最高ですよ」と村の暮らしを楽しむ様子も語ってくれました。
お次はいよいよ買い物タイム!向かったのは『いいたて村の道の駅 までい館』。周囲には広々とした芝生に子どもの遊び場、ドッグラン、隣接して村営住宅もあり、村の中でも最も賑わう中心地です。館内にはカスミソウや凍餅、椏久里珈琲のカップオンコーヒー、村のオリジナルブランド「雪っ娘かぼちゃ」を使った菓子、ナツハゼのジャムなど村の特産品がズラリ。この日は日曜日ということもあり、家族連れやカップルなど多くのお客さんで大賑わい。参加者のみなさんも、旅の思い出を振り返りながら一つひとつ手に取り選んでいました。
店主の人柄に触れ、また帰って来たくなる思い出の味
そして一行は今回のツアーの最終目的地・農家レストラン『氣まぐれ茶屋ちえこ』へ。古民家を改装した店内は天井が高く、囲炉裏があって非日常、でもすごく懐かしさが込み上げるステキな空間に参加者からもため息がこぼれます。ここで迎えてくれるのが、店主の佐々木千榮子さん。ここでの昼食が村での最後の食事です。テーブルいっぱいに並べられた千榮子さんの愛情たっぷりの手料理。凍餅、わらびの生姜漬け、舞茸おこわ、煮物、筍のごま茹で、しそ巻き、みそじゃがなど、どれも優しくてほっこりする味わいです。59歳で店を始め、いち早くどぶろく作りにも挑戦し許可をもらうことにも成功した千榮子さん。「やる人がいないなら、やらなくっちゃ」と自分を奮い立たせ、病気でさえも乗り越えてきたのだそう。「もうすぐ4回目の成人式(80歳)。私にはバックもブレーキもない、前進あるのみ!と思って頑張っています」とのお話に参加者一同、大拍手を送りました。
さて食後は旅の締めくくり。一人ひとりが今回の旅で見つけた飯舘村の”素敵なもの”と旅の感想を発表し合いました。参加者に事前に配付されたカゴの中には、旅の中で出会った飯舘村の花やそば粉、エゴマ、きなこ飴やしそ巻きなど、特産品がいっぱい。『あいの沢』で拾った松ぼっくりや村のパンフレットなども。また「自然の中での農作業やたくさんのホタルをみんなで見た感動など、カゴに入らない体験も心の中にしまって持って帰りたい」と話す参加者も。何より、みなさんが口々に言っていたのは、村の人たちの温かさでした。ツアーの各所で対応してくれた村民の方々が、親切に楽しく色々教えてくれたおかげで、参加者それぞれも充実した2日間を過ごし、村と自分の生き方を重ね合わせて、村とのつながり方に想いを馳せることができたようです。
今回の「はじめてのミチシル旅 第1弾」は、飯舘村での体験、出会いがあふれる2日間。私自身、村の自然の豊かさに触れ、”までい”の精神に基づく丁寧な暮らしを体験することができました。そして、この飯舘村の最大の魅力はこの場所で暮らす村民なのだと感じました。
昔から暮らしてきた人たちや、地域おこし協力隊などで新しく入ってきた若者たちなど、それぞれに暮らしを楽しみながら、さらなる挑戦を続けている姿にワクワク。今回お話を聞いたり体験したりすることで、もっとこの村に関わってみたいという想いが強くなりました。移住を検討中の方はもちろん、多拠点生活や地方の地域と関わりながら暮らしを考えてみたい人はぜひ参加してみてください。そして、肌で飯舘村を体感してみてくださいね!