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2024.09.22

【ミチシル旅レポートvol.5】9/21-22つながるミチシル旅「暮らしと村の仕事に触れる旅」

1泊2日でゆく飯舘村・移住ツアー「ミチシル旅2024ツアーレポート」9/21~22

福島県飯舘村の暮らしを知る移住検討者向けモニターツアー「つながるミチシル旅」の第2弾が、9月21日から22日の2日間にわたり開催されました。今回はその行程に密着し、参加者と同じ目線で飯舘村の魅力ある暮らしを体験してきました。

ちょうど夏から秋に季節が移ろうタイミングで、単に村の中を巡るのみならず、村民の方々との”ふれあい”を通して、未知なる”モノ・コト”、そして自分の中にある”未知”を感じられる、そんな旅でした。

【行程一覧】

1日目

[11:00] 福島駅集合・出発

[12:00] 『もりの駅まごころ』にて昼食・オリエンテーション

[13:30] 飯樋町行政区にこんにちは!

[14:45] 『農業研修館きらり』見学

[16:00] 先輩移住者・田中さんを囲んでクロストーク

[18:00] 『氣まぐれ茶屋ちえこ』でいただく夕食

[20:00] 宿泊体験館『きこり』にて就寝

2日目

[8:00] 『エムケーファーム』菊野里絵さんの朝食

[9:00] 『エムケーファーム』にて農業体験

[10:00] 『移住サポートセンター3ど°』スタッフによる移住相談会

[11:00] 『いいたて村の道の駅までい館』で買い物

[12:30] レストラン『La Kasse(ラ・カッセ)』で昼食&振り返り

[14:00] 飯舘村出発

[15:00] 福島駅着・解散

【1日目】

お出迎えは”まごころ”こもったお料理から!

村民だけでなく、移住を検討している方も利用できる加工施設『もりの駅 まごころ』が旅のスタート地点。今回は、関東地方から地方移住を検討されている7名の参加者が集合し、飯舘村を巡ります。

村のお母さん方がお出迎えの準備中

まずはこの施設を運営する『NPO法人もりの駅 まごころ運営協議会』代表の鮎川さんが、施設内を案内してくれました。

「まごころ」は、2011年の震災発災前のかつては、野菜等の産直販売施設として使われていました。村の避難解除後も閉まったままだったこの施設を村が利活用したいという方針と、村で農業をする人や生産加工を行いたい人、村への移住を検討する人に活用してもらいたいとの、自身も移住者である鮎川さんの思いから、施設の再開に至りました。

施設としては、業務用設備が揃っており、菓子製造・めん製造・.そうざい製造・漬物製造の許可を取得しているとのこと。そして、村民もしくは移住検討者であれば無料で使えることには、参加メンバーからも驚きの声が上がっていました。

手づくりのお料理に参加メンバーも大満足!

さあ、お昼ご飯です。この日は村で作られたお野菜を中心に、協議会メンバーの松原光年さん、佐藤英信さんによる手打ちそばをはじめ、茄子やハヤトウリ、きゅうりのお漬物などの夏野菜。その他、秋の彼岸時期ということで、きな粉・納豆・餡子・じゅうねん(えごま)のお餅が並びました。

同じ協議会メンバーで、お料理の準備・説明をして下さった細杉今朝代さんは、生まれも育ちも、いまのお住まいも村内という、生粋の飯舘村民のおひとりです。

当日のメニューも紹介してくださった今朝代さん

「(震災で人が減ってしまった村ではあるが)今後はやっぱり人口が増えて、かつての子どもたちがワイワイしているような村になってほしい。そんな中で自分は、住み慣れたこの地での隣近所付き合いなど、自分らしい暮らしを楽しくやっていきたい」と今朝代さん。震災前は葉タバコの栽培や畜産などをされていたそうですが、いまはお1人暮らしをされている中、オヤマボクチ(ヤマゴボウ)などの野菜の栽培、凍み餅づくり、そして国産大豆のみで仕込むお味噌づくりをなさっているそうです。

食後はスタッフ・参加メンバーの自己紹介タイム

「どこから来たの?」や「こんな野菜が採れたりするよ」など、和気あいあいとした雰囲気でお昼を頂きました。

リアルな”暮らし”を区長さんに聞きに

次のコンテンツは「行政区こんにちは」と題して、「飯樋町(いいといまち)行政区」にお邪魔しました。飯樋町行政区は、震災前は飯舘村の中心街区のひとつでした。行政区長の 渡邊 富士男さんを訪ね、地域の特色や暮らしを教えていただきました。

飯樋の隅々までご存じの富士男さんを囲んで

「飯樋町を残したい。どんな形でも。言葉も、地名も。そのためにおれはココに居るんだ」と仰る富士男さん。震災前・震災後の盆踊りのエピソードや、火曜日と金曜日にしか先生(お医者さん)が来ないので医療体制がなかなか不十分であること、若い担い手が少ないことで、今後地域がどうなってゆくのかという心配もあるという、生活に根ざしたリアルな状況をお話しいただきました。

一方、あれもないこれもないだけではなく、朗報として、この春(2025年春)に村に初のドラッグストアがオープンすることには非常に期待しているそう。友だちとは「(買い物をすることで)自分たちで育てような!」と話しているとか。買い物環境が整ってくれるのは非常にありがたく、そしてご自身の好きな”カツオの刺身”が冷凍で販売されるとの情報もあるらしく、お話から楽しみにされている気持ちがとても伝わってきました。

村暮らしのリアル”をお話し頂きました

そして、聞くだけよりも実際見て回ろう!ということで、バスで行政区の中心部をご案内頂きました。

さすが行政区長さん、地区のいろいろな情報がここに

家屋解体で更地になったところが多い中で「ココは日用品を売っていた」「ここは畳屋さん」など、当時の賑わいが偲ばれるお話でした。また、年月を経て使っていない居住用物件を最近手放す人も増え始めてきたとのこと。飯舘村でも空き家・空き地バンクのWebサイトがあり、条件の合う物件とこうしたルートから出逢うことができるかもしれませんね。

原発事故による全村避難により、福島市の松川町に避難していた富士男さん。数年間の避難生活で現地の住民とも仲良くなったものの、ちょっとした訛りの違いや風習(盆踊りや地域行事など)といった生活の折々で「ココは自分が最後まで居る場所ではない」と感じたといいます。

6年後に村が避難解除され、その半年後には村に戻って行政区の活動を再開させたり、飯樋に残る文化・風習を残そうという富士男さんの動きそのものからも、人にとって古里はかけがえのない場所であり、富士男さんが飯樋町を大切に思う熱が伝わる時間となりました。

『農業研修館きらり』を見学

ツアーの次の目的地として、今年7月に開所した『農業研修館きらり』を見学しました。震災前の基幹産業であった農業へのテコ入れとして、農業研修やセミナーの開催による関係人口の創出や新規就農のハードルを下げることなどを目的に村が整備した施設だそう。遠方からの参加や複数日での研修会開催を想定した宿泊設備としての客室を見学しました。農業研修向けの施設ということから、移住前の農業体験を伴う宿泊の場合、1,650円/泊で宿泊できるということで、村の農業再興にかける本気度が窺えます。

一番大きい客室はグループでの滞在にも◎

先輩移住者を囲んだクロストーク

(筆者が知る限りの)「移住体験ツアー」にありがちな『移住して何々をしている○○さん』や『その地に長年住んでいる△△さん』の「お話を聞く場」ではなく、各参加メンバーが先輩移住者を囲んで「ツアーに参加した想い」や「移住に興味がある背景」等を話すという、珍しいコンテンツが設けられていました!

今ツアーのアテンドスタッフで先輩移住者の田中さん。東京出身で、2011年の震災時には福島県立医科大学大学院の看護研究科に在籍していました。その後看護師として、飯舘村が帰還困難区域だった当時から、仮設住宅で村民との交流があり、避難指示解除後すぐ村に移住。かつて『椏久里珈琲』だった店舗を活用し、いまはベーグル屋さんを営んでいます。

先輩移住者で”村のベーグル屋さん”の田中さん

さて、今回集まったメンバーは、住む場所や年齢がバラバラで、初めて顔を合わせる方々ばかりです。参加理由も様々で、例えば、

・職業経験が豊富な方:50以上の職種を経験し、還暦を迎えるにあたり、第二の人生を過ごす場所として飯舘か能登かで迷っている。

・陶芸家の方:自営業でInstagramをメインに集客しており、制作に集中できる環境や充実した設備を求めて移住先を探している。

・シェアハウス住民の方:現在のシェアハウスに数年住んでおり、環境を変えたいと考えて他県への引っ越しを検討している。

・ウインタースポーツ&温泉好きの方:夫がウインタースポーツと温泉が好きで、東北を移住先に考えている。

このように、参加メンバーそれぞれが「ツアーの参加理由」や「移住を望む背景」について順に話していきます。

それぞれの”想い”が見えると距離も縮まります

そして、各メンバーがそれぞれの”想い”を共有した後、出された質問や不安な部分に対して、田中さんが先輩移住者の観点から、具体的なアドバイスや村の現状について、または使える制度・補助金等についても回答するという、まさにひとりひとりの”想い”に応える場になりました。

参加メンバーからも「移住ハードルが下がった」「ここ(村)に移り住んだ後のリアルな話も聞けて、イメージに実感が持てた」という感想が上がりました。

ミチシル旅は移住検討を前提としたツアーではあるものの、そこだけに囚われることなく、今回の様に「自分らしい生き方を考えるキッカケにしてほしい」という想いを起点としており、気負い過ぎることなく、参加しやすいツアーなのかもしれませんね。

「私の人生はブレーキなし、前進のみ」千榮子さんのお店で夕食

夕食は村の北部に位置する佐須地区で「氣まぐれ茶屋ちえこ」を切り盛りされる、佐々木千榮子さんのお店へ。

お店をやってきた”これまで”を話してくださった千榮子さん

千榮子さんは2004年に59歳でお店を開業し、今年で20周年を迎えます。飯舘村が県内初の「どぶろく特区」に認定された際に製造免許を取得し、どぶろく作りを続けてきました。震災で全村避難となり、福島市の避難住宅に移った後も、どぶろくの製造を再開しようと税務署と交渉し、特例で製造許可を得ました。

しかし、避難から1年後にご主人が亡くなり、寂しい日々が続きましたが、仲間の励ましで気持ちを持ち直し、2017年に避難が解除された後、2019年5月1日にお店を再開しました。折しもコロナ禍で厳しい状況が続く中、2年前に息子さんも亡くなり、大きなショックを受けました。それでも、「私の人生はブレーキなし、前進のみ」と語り、多くの人が訪れることが励みになっているそうです。

「料理なんてこんな田舎のものしかないけど、おいしく食べてもらえれば」と頂いたお料理は、飯舘村やあぶくま高地で永く食べられてきた”地の食べ物”そのもの!

村ならではの料理や野菜がいっぱい!

今回の参加メンバーにドローン操縦士の方がいたので、『古民家の中をドローン飛行して撮影』して盛り上がる一面も。

なんと古民家にドローンが飛びました

食後は『宿泊体験施設きこり』に戻り、三々五々、就寝となりました。

まるで農家の朝ごはん!?パワーをつけて農作業へ

翌朝は、福島の復興を願って設立された『株式会社エムケーファーム』を経営する菊野さんが届けてくださった、村で育ったお米や野菜を使った朝食です。

エムケーファームは、震災の日を最後に使われなくなった小学校を拠点にし、耕作放棄地となっていた飯舘村内の畑で野菜の生産を行っています。

“農家の朝ごはん”を感じる朝食

おにぎりはまさに農家の朝ごはんといった感じで「塩昆布とツナ」「ゆかりと梅干」「(天かすを使った)悪魔のおにぎり」の3種類。そこに玉子焼き、茄子の煮びたし、きゅうりの漬物と、このあと農園で収穫体験をする腹ごしらえとして、パワーをいただきました。

菊野さん自らトマトの採り方をレクチャー

こちらの菊野さん、もともとは東京で別のお仕事をされていました。福島市で桃農家をなさっていたおじいさんおばあさんのお宅で、子どものころ沢山桃を食べたというたのしい原体験から、脱サラして福島県に移住、新規就農された方です。震災後、「飯舘村で農業を事業化する」プロジェクトのメンバーとして、2020年に村に移住。農業法人を設立し、現在は代表として活躍しています。

「飯舘は全村避難で人口が減り、新規参入のハードルが低かった」と話す菊野さん。一方で、農地は10年近く耕作されず、除染の影響で肥沃な表土がはぎとられていたため土壌改良に苦労しましたが、少しずつ軌道に乗り始めています。現在、農産物はほとんど県内で売れており、しいたけ等多品目の生産拡大も視野に入れています。スタッフも募集中とのこと。

参加メンバーもハウスでのトマト収穫を体験しつつ、トマトの生育度合いや村での暮らし、事業をするハードルなどについて聞くなど、充実した時間となりました。

生産とつながるのもミチシル旅の魅力

「暮らしとしては大きなオンと大きなオフがある感じ」と村での季節の移ろいを表現なさる菊野さん。「冬の寒さはなかなか厳しいけど、それを越えた時の喜びが春にあって、冬は冬で手仕事したりする楽しみもある」と語ります。雪が舞って寒い、楽しみがないのでは?とのイメージだった参加メンバーも、冬へのハードルがここで少し下がったような感じでした。

最後は全員でパシャリ

『いいたて移住サポートセンター3ど°』で個別相談会

収穫体験後、一行は村の移住相談窓口『いいたて移住サポートセンター3ど°』へ移動。ここでは村の現状や移住にあたり使用できる制度や補助などについて、相談員から説明を頂きました。

移住支援制度が充実している飯舘村について解説

そのうえで「個別相談会」として、ツアーのアテンドスタッフも含めた村の移住者・移住相談員に、参加メンバーそれぞれが自由に相談できるという時間がありました。

みんなの前での質問ではなく、個別に聞きたい人に、それもツアーを経てある程度どんな人なのか分かってきたタイミングで聞ける機会ということで、「村に移住する前と後でどう変わりましたか」、「やっぱり冬の暮らしが不安、実際どんな感じですか?」など、村での暮らしの”リアル”に迫る質問などが寄せられていました。

“個別に聞ける”個別相談会

道の駅に立ち寄り、村のレストランへ

今回のミチシル旅では、「村でステキ!」と感じたものを各参加メンバーが手提げかごに集めて最後に発表する」というミッションがありました。コンビニも併設されている『いいたて村の道の駅までい館』に立ち寄り、参加メンバーはそれぞれに、特産品や農産物など、お土産になるようなものも収集。

農産物の直売などもあり楽しい道の駅でした

ブルーベリーの一種「ナツハゼ」に初めて出逢った参加メンバー。「どうしても実の状態のままで食べてみたい!」とのことで購入。食べてみて、酸っぱい目に遭っていました。村では普通、ジャムなどに加工していただきます。こういった経験も、現地だからこそできる貴重な体験ですね。

実の酸っぱさにビックリ

ランチは、『田舎レストランLa Kasse (ラ・カッセ)』のオーナーシェフ、佐藤雄紀さんが丹精込めたハンバーグランチです。

飯舘の牛に参加メンバーも舌鼓!

「飯舘村はもともと和牛肥育(畜産)が盛んだった場所。牛肉を使った料理はもちろん、採れる野菜や果物の種類も多く、だからこそ楽しめる『食べ方』や『旬』といったものを、料理を通じて感じてもらえれば」と話します。彼自身も村生まれ村育ちで、Uターン後にレストランをオープンしました。

村の食材の料理で出迎えて下さった佐藤シェフ

この日の食材も、いちじく(県内産)以外は、全て村のものという徹底ぶり!

ハンバーグももちろんでしたが、じゃがいも(イータテベイク)のクリームスープが絶品で、参加メンバーからも感嘆の声が漏れていました。

ツアーを経てインタビューしてみました!

男性(20代)は、「(ツアー自体に)コミュニケーションをとる場がしっかり設定されていたことで、打ち解け合えるまでの時間が縮まるし、名札があることで相手の名前が分かり、話もできやすい仕立てなのが良かったです。村をめぐってみて、まだまだ若い方が少ないのかなと感じた部分もありましたが、ごはんがいっぱい出てくるところなどからしても、人があたたかいところなんだなという感じと、時間がゆったり流れる感じ、そして空気がイイ、素敵な所だなと思いました」と振り返ってくれました。

と感想を語ってくれました。

また、茨城から参加された女性(50代)は、「ツアー募集のHPも見やすく分かりやすく、好感の持てる作りだったので申し込みました。当日までは年齢的にも参加して大丈夫かなと不安でしたが、同年代の人もいて安心しました。また、現地でどういったお仕事をされている人がいるのかの紹介などがあったので、移住に対するハードルが下がりました」

村の魅力や地域性に触れながら、暮らしのリアルを垣間見、仕事の現場に触れた2日間のミチシル旅。今回参加されたみなさんは、移住への夢を叶える大きな一歩を踏み出しました。飯舘村が気になった方は、ぜひ村をふらりと訪れることからはじめてみては、いかがでしょうか。「いいたて移住サポートセンター』へのお問い合わせをお待ちしております。

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