2024.08.25
【ミチシル旅レポートvol.4】8/24-25はじめてのミチシル旅「生産と直結する暮らしを感じる旅」
福島県飯舘村の暮らしを知る移住検討者向けモニターツアー「はじめてのミチシル旅」が、8月24日から25日の2日間にわたり開催されました。今回はその行程に密着し、参加者と同じ目線で飯舘村の魅力ある暮らしを体験してきました。
福島県「中通り」と「浜通り」地方を隔てる山あいにある小さな村で、そこに根付く”未知なる魅力を知る”ことのできる旅でした!
【行程一覧】
1日目
[11:00] 福島駅集合・出発
[12:00] 『もりの駅まごころ』にて昼食・オリエンテーション
[13:30] 地域おこし協力隊OGを訪ねて『図図倉庫』へ
[14:45] 農業体験『わくわく農業体験塾』
[16:00] 農業研修館『きらり』見学
[18:00] 村で愛されるうどん屋さん『ゑびす庵』にて夕食
[20:00] 宿泊体験館『きこり』にて就寝
2日目
[8:00] La Kasse (ラ・カッセ)佐藤雄紀さんの朝食
[9:00] 移住サポートセンター『3ど°』スタッフによる移住相談会
[10:00] イベント『いいたてつなぐ写真館』に参加
[12:00] 『コーヒーポアハウス』で昼食・ふり返りアンケート
[13:30] 『道の駅までい館』で買い物
[14:00] 飯舘村出発
[15:00] 福島駅着・解散
【1日目】
この地域らしく、まずは「食べ物を囲む」ことから!
旅の行程は村の加工場施設『もりの駅まごころ』から。ここで福島駅集合メンバーと、車で直接来村するメンバーが合流し、ツアーが始まります。私(筆者)が到着した際には、まごころ運営協議会の村民のみなさんによって、昼食の支度が行われていました。
準備を始める案内人メンバーは「どんな参加者さんが集まるかな、ドキドキ!」「今日のお料理は全部、村で採れた野菜で。ちょうど夏野菜がいい時期だ」と、献立を前に村民の松原さんが教えてくれました。
参加者全員が揃ったら、早速交流昼食です。大盛りのサラダやお漬物をはじめ、まごころ運営協議会の松原光年さん、佐藤英信さんによる「鴨南蛮そば」と「ざるそば」、えごまダレのお餅に手作りの羊羹や飯舘村特産のあぶくまもち米を使用した甘酒まで、お腹がはちきれるくらいの量を準備いただきました。
しかしこれは、まだ食糧が豊かでなかった時代からの”来てくれた人をもてなす気持ち”の表れで、飯舘村も含まれる、とくに冬の寒さが厳しい「中山間地域」で顕著に見られる情景です。今回ご用意頂いた”粒あり”と”粒なし”の「甘酒の飲み比べ」など、一次産業の舞台だからこそできる愉しみ方であり、やさしい味わいが「村の外から来てくれた人たちに楽しんでもらいたい」という想いを感じさせてくれました。
この施設を運営するNPO法人『もりの駅まごころ運営協議会』代表の鮎川さんからは、加工施設としての設備等について案内頂きました。
中には餅つき機、スチームコンベクションオーブン、ショックフリーザー、電解水生成装置、ホット真空パック機など、到底個人ではそろえるのが難しい機械が設けられており、なんと飯舘村民と移住希望者なら無料で使用できるとのこと。
私(筆者)も思わず移住を検討したくなるほど。それもそのはず、この施設は2011年の東日本大震災(以降は震災と表記)前には、産直販売所として使われていたそうで、村で採れた農産物等の調理・加工の設備が当時から備わっていたということです。もちろん小ロットでの使用も可能で、小規模な畑や収穫量でも、ここで加工して販売等できるというのは非常に魅力的です。
実は、鮎川さんご自身も、20年ほど前に村へ移住された方。もともと秋田のご出身で、60歳の定年までは企業にお勤めされた後、ざっくりと「畑などをして田舎暮らししたいなぁ」と考えていました。ちょうどその2004年不動産屋さんに紹介された飯舘村の物件が、希望していた畑の広さや環境とマッチして決意されたとのこと。2011年の震災・避難までは、この「もりの駅まごころ」に農産物を収めて販売したり、米粉パンを奥様と娘で製造販売していたそうです。
加工施設の利用対象が”村民のみ”ならず、”移住を検討している段階の方でも利用できる”と設定されている点において、ご自身も移住経験者である鮎川さんの想いとして、そこに表れているように感じられました。
さて、満腹のお腹とともに、次の目的地『図図倉庫』へ向かいました。
参加メンバーの頭の上に”!”や”?”がいっぱい!
ほどなくツアー参加者一行は、ホームセンターのような建物にやって来ました。案内してくださる図図倉庫 共同代表の矢野 淳さん(写真右)。この図図倉庫こそ、おそらく今回の行程で最も尖っていた訪問先だったと思います。それもそのはず、元ホームセンターの建物を活用し、中にはカフェあり、シェアオフィスあり、ワサビの実証栽培場あり、アートの常設展示まであるのですから…。
しかし、そういった図図倉庫ですが「飯舘村や世界が抱える環境課題と、これからの地域環境づくりにアプローチする秘密基地」というコンセプトと「交流」「環境」「循環」といったキーワードを軸に、進化を続けています。
実際に「村外からのアーティスト来訪機会」や、イベント開催などを通した「村内外の若い人たちのつながり」など、”新しい村の風”が醸成されているとのことです。
こちらでは、村の地域おこし協力隊第1号でOGの松本奈々さんから、村の協力隊制度立ち上げ時のエピソードや、ご自身で行われた活動などについて、そして図図倉庫を運営する株式会社MARBLiNGの共同代表(矢野さんとの)として、今後の展望などを伺いました。「福島なので」「震災復興のため」という意識を特別強く持って飯舘村に来たわけではないと話してくださった松本さん。それゆえに自身がチャレンジしてみたい・いいなと思えることに向かってストレートに活動でき、それが地域のイイことにつながったり、喜んでもらえたりということまでリアルに感じられる環境が飯舘村にはあるとのこと。
かつて東京でシステムエンジニアをしていた頃とは違い、今では企画の立案から進行、関わってくれる人との調整など、幅広い領域まで手掛けているそう。
実際に協力隊制度への意欲があるツアー参加者からは、先輩の生の声が聞ける機会ということもあり、着任後のエピソードや業務内容、キャリアの考え方などの質問も投げかけられました。
都会とは違い、ココには生産と直結する暮らしが
続けて向かったのは、村の南側「上飯樋(かみいいとい)地区」。赤石澤 傭(あかいしざわ すなお)さんの畑で行われている『わくわく農業体験塾』のもとへお邪魔しました。
傭さん曰く「(震災に伴う原子力災害での)全村避難が解除されたものの、それまでの村の人付き合い・コミュニティは途切れてしまった。再び同じものを作ることはできないが、還ってきた人・新しく村に来てくれた人が交流する場として、わくわく農業体験塾の取り組みが始まりました。農作業を通じて楽しく活動しています」とのこと。
“移住”と言うと「移住して起業した人」や「社会課題のために移住して…」といった記事などをよく見かけますが、実は移住後の毎日がすべてそういった方とのつながりではなく、暮らしの大半は「地域に生きる同士の、人付き合い」なのです。
畑で体験できた「住民との触れ合い」でした。「これはまだ(収穫するには)早いね」「これはどうやって食べるんですか?」など、誰が促すまでもなく村民が参加者にまるで伴走者のように寄り添っての自然なやりとりが生まれる雰囲気に。実際に「オクラってこうやって実がなるんですね!」「こんなに柔らかくて甘いアスパラ、初めて食べた!」といった感動の声も飛び交いました。
最後に、参加者の入刀で黒スイカを割って和気あいあいとみんなでいただきました。資源や人の数が限られた環境の山あいに位置する、この村に根付いてきたまさに「ひとつのものをみんなで分け合う」中山間地域らしい光景でした。
オープンしたての研修施設にみんなの歓声が!
農業振興に力を入れている飯舘村。ツアーの一行は、今年7月に開所したばかりの新規就農者技術習得管理施設『農業研修館きらり』を訪れ、飯舘村役場農業委員会の草野さんにお話を伺いました。
「震災前の基幹産業と言えば農業でしたが、全村避難で6,000人いた人口が1,500人に減少したことに伴い、農家数も震災後50軒にまで減少しました。しかし、現在は120軒程度にまで回復してきています。」とのこと。村の各所にある加工場施設のみならず、村としては新たな担い手を発掘するとともに、農業を通じた村内外の交流を促進すべく、
・新規就農のハードルを下げることで、村への移住定住促進を図る
・農業研修やセミナーの開催等による関係人口の創出を図る
これらのことを目的に、この『農業研修館きらり』が完成したそうです。また、遠方からの参加や複数日での研修会開催を想定し、きらりには宿泊設備も整っています。参加者向けのルームツアーでは、その客室の広さや設備に、思わず歓声が上がっていました。
村の胃袋を支えるうどん屋さんで和気あいあいと
初日ラストの訪問先は、村のうどん屋さん「ゑびす庵」へ。こちらは全村避難時に”最後まで残り、避難解除後はいち早く再開した”お店。高橋ちよ子さんのご家族で経営されているアットホームな雰囲気で、お昼時にはガラス越しにうどん打ちの様子を見ることもできます。
移住後の暮らしや、どんなことが気になるかなど、参加者同士和気あいあいと会話が弾み、滞在予定時間を過ぎてしまうくらい、色々な話に花が咲きました。
【2日目】
帰村した若手シェフの織りなす、ステキなモーニング♪
翌朝は村で田舎レストラン『La Kasse (ラ・カッセ)』を運営するオーナーシェフ、佐藤 雄紀さんによる出張モーニングビュッフェが登場。「生産と直結している環境だからこそ楽しめる『食べ方』や、時期によっていろいろな種類の食材が愉しめるという村の『魅力』や『豊かさ』を、料理を通じて伝えることで、来訪者やファンを増やしたい」と話す佐藤シェフ。
“La Kasse”という店名は相馬方言で「どうぞ食べてください」という意味の「食わっせ」から来ているそうで、参加者の中にはおかわりする人も。
いいたて移住サポートセンター 『3ど°』に訪問
朝食後は、村に今年移住した相談員より、
・村での暮らしについて
・仕事について
・移住にあたっての補助制度など
これらのことについて説明頂きました。
参加者の方々からは「雪が降りる冬の暮らし」について、寒さが厳しかったり道が凍ったりすることを不安視する質問が多く出ましたが、それに対して案内人の大槻さん(元飯舘村地域おこし協力隊員で、現在は村内で起業)から「寒い中での楽しみを感じられるようなイベントが行われる」ことや、ほかにも「寒さに対する知恵や乗り越え方が、長い時間をかけて地域で育まれてきており、それに触れられる環境であるとも捉えられる」など、実際の暮らしぶりからのお話も紹介されました。
イベント“つなぐ写真館”に参加、村で暮らす方々との交流も
今回のツアー時にちょうど開催されていた『つなぐ写真館』に一行も参加しました。イベントに集まった消防団の方々や、震災前から盛んだった肥育(肉牛を育てて出荷する生業)をされている山田 豊さんにお話を聞くというスペシャルな出会いも。実際に村に住んでいる方の生の声を直接聞ける機会となり、交流の場が生まれました。
撮影後には、村の地域おこし協力隊員として『コーヒーポアハウス』を経営している横山梨沙さんお手製ビュッフェタイプのお昼ご飯を頂きました。横山さんは『コーヒー屋の食堂』として、普段和定食のランチ営業もしています。今回も村の野菜や食事を使用した献立をご用意頂きました。
こうした2日間の行程について、東京から参加された男性(43歳)は「(参加者の)みなさんと話せる機会が多かったのがよかったと思います。和気あいあいとしていて、移住を前向きに検討している熱量ある方が多かったので、近い目線でストレスなく参加できました。現在お住まいの方に直接お話が聞けるチャンスも多く、移住ツアーとしても移住後の姿が描きやすく、クオリティが高いなと思いました。(買い物環境や病院が遠いなどの)物理的な部分は気にならないですし、その分フットワーク軽く生活できるかなという面も感じています。あとは冬場の寒いのが苦手なので、そこだけですかね(笑)」と感想を語ってくれました。
また、女性(24歳)は「前回村に来た時に立ち寄った、までい館(道の駅)のスタッフの方がいい人で印象に残っていたので参加してみました。おじいちゃんおばあちゃんと話すのも楽しく、もともと栄えていた村ということもあって、外から入っても受け入れてもらえるなと感じました。」とのこと。
「飯舘村に住みたいと思いますか?」という質問には、「確かに暮らしてみたいなぁと思いますが、パートナーを含めた自分たちの就ける仕事の選択肢が、どれほどあるのか知りたいところです。農業以外の職についても知りたいな」と。あとは村のどのあたりが居住エリアで、このあたりは商業地でというのが分かるような地図や情報があるといいかな」と、みなさん現実的な移住についての情報を、今回のツアーでしっかりと掴まれた様子でした。
ツアーのみならず、いいたて移住サポートセンター3ど°では、常時移住定住のご相談を承っております。次回のアナタのご参加を、心よりお待ちいたしております。