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2024.07.14

【ミチシル旅レポートvol.2】7/13-14つながるミチシル旅「村の未来と農業のリアルを語る旅」

1泊2日でゆく飯舘村・移住ツアー「ミチシル旅2024ツアーレポート」7/13~14

豊かな自然に囲まれ、「日本で最も美しい村」連合に加盟する飯舘村。今回は7月 13 日・14 日の2日間、初夏の村を訪れて「しごと」「くらし」「子育て」を知る移住検討者向けモニターツアー「ミチシル旅」が開催されました。テーマは、さらに深く掘り下げて実際に移住後の村での暮らしを体験する「つながるミチシル旅」。それぞれにとってのどんな”拠りどころ”を見つけられたのでしょうか。

【行程一覧】

1日目

[11:00] 福島駅集合・出発

[12:00] 「までいなマルシェ」で買い物・昼食・オリエンテーション

[13:30] 深谷行政区の習わしに触れ、葉山へ

[15:00] 農業研修館『きらり』見学

[16:00] 先輩移住者・塚越さんを囲んでクロストーク

[18:00] 『ゑびす庵』で夕食

[20:00] 宿泊体験館『きこり』にて就寝

 

2日目

[8:00] エムケーファーム菊野里絵さんの朝食

[9:00] インゲン農家・末永さんの畑で農作業体験

[10:00] 移住サポートセンター『3ど°』スタッフによる移住相談会

[11:00] 『いいたて村の道の駅までい館』で買い物

[12:00] 『コーヒーポアハウス』で昼食・振り返りアンケート

[14:00] 飯舘村出発

[15:00] 福島駅着・解散

【1日目】

今回は関東や仙台から6名が参加。半数以上の方が村に1度以上は訪れたことがあるリピーターさんでした。テーマは、村の魅力をさらに深く体験できる「つながるミチシル旅」。さあ、“移住”の目線で、村を深掘っていきましょう。

まずは村の生産者が集まるマルシェでおいしいもの探し

一行がまず向かったのはこの日、『いいたて村の道の駅 までい館』で行われていた「までいなマルシェ」。村の生産者の皆さんにより、年に2回行われているそうです。村内農業法人のエムケーファームや鮎川農園、福島大学のゼミ生が取り組む『村民食堂』など、個性豊かな生産者が勢揃いでした。「まずは商品がなくなる前に!」とカゴを片手に買い物へ向かいます。このカゴ、ただのカゴではありません。この2日間の旅の中で自分が見つけた素敵なものを、事務局が用意したカゴに入れていく”素敵なもの集め企画”。旅の最後にマイベストを発表します。さあ、どんなときめきを、2日間で集められるかな。

マルシェは、新鮮な野菜や果物、愛情込めたお弁当、手作りみそなど、目移りする品揃え。「食べてみて」と自慢のみそを試食させてくれたのは細杉今朝代さん。生産者と直接交流できるのがマルシェの魅力です。参加者も「たくさん新鮮な野菜があったので思わず買っちゃった!そうしたら桃もサービスしてもらえて」と嬉しそう。マルシェで村の元気な村民たちに出会い、再会し、期待が高まります。みなさん無事、昼食もゲット。村の豊かな食材に小腹も満たされ、楽しいツアーの幕開けとなりました。

守り続ける伝統の慣わし
地域の農業に欠かせない水の源を辿る

「いいたて村の道の駅 までい館」は『深谷行政区』という地域にあります。その区長である齋藤照吉さんから話を聞きました。昔から米や花卉の栽培などが盛んで、山から水を引いて農業に活用してきたという深谷行政区。そして、その水源地となっている『葉山』はそこに住む人々にとって神聖な場所です。毎年、餅をついて奉納し、家内安全や五穀豊穣を祈る慣わしが昔から受け継がれてきました。

人との繋がりが切っても切れないのが田舎暮らしの特徴。「昔は”結(ゆい)”といって、田植えや稲刈りなど人手不足の時は、となり近所の人を集めて手伝ってもらっていたんだ」と話す齋藤区長。伝統行事も畑仕事も地域のみんなで協力してきたのだそう。

深谷行政区の区長・齋藤照吉さん

それでは早速、実際に『葉山』へ登ってみましょう!今回は往復 20 分程の裏道コースを行きます。ツアー当日は快晴で真夏のような暑さでしたが、森の中に一歩入れば体感は少しひんやり。「都内だとこんなに歩くと汗だくだけど、涼しくて気持ちがいい」と参加者。

そして、なだらかな道から急斜面へ。小川を渡り、岩場を乗り越え、小さく祀られた山の上の祠に到着。みんなで手を合わせ貴重な体験になりました。


全村避難により関わる人が減ってしまったものの、暮らす人々にとって大切な場所。だからこそ絶やさず大切に守り続けていきたいと齋藤区長。「こういう慣わしを知ってもらって、一緒に地域を守っていってもらえたら」と話してくれました。区長自ら中心となり定期的に地域や山の草刈りを行っている姿から、”自分たちが守るんだ”という誇りや責任、さらには地域への深い愛を感じました。

新しい農業の担い手を育てるための施設をどんどん活用してほしい

村の農業に欠かせない水の源を知ったところで、お次は、『農業研修館きらり』へ。役場の産業振興課農政第一係の齋藤博史係長に、具体的な村の農業の特徴について説明していただきました。現在の農家数は122 軒。米農家が多く、また黒毛和牛を飼育する和牛農家も活躍しています。

「村の農産物は放射線量をしっかり測っているので、”世界一安全”なものという自信があります。販路もあるので、安心して農業に取り組める環境があります」と話す齋藤係長。新しい農業の担い手を育てていくために、村でも手厚いサポートを行っているのだそう。農業の中長期的な研修を受ける人が利用できる『きらり』もその一つ。家族での滞在を想定した館内はキレイで快適な空間。「こんなステキな施設があるのなら、ぜひ利用して研修を受けてみたい」と参加者。

心強いサポートの存在を知って、新しい環境での農業も不安少なく挑戦できる可能性を感じました。「どんな農業法人があるのですか?」「農業体験させてくれる農家さんはいるのですか?」など質問も飛び交いました。

先輩移住者や他の参加者と語り合う夢

見学後は先輩移住者とのクロストーク!実は今回のツアーアテンドで参加している塚越栄光さんも東京から移り住んで4年目。造園業の傍、村で小菊の栽培に取り組んでいます。ここでは塚越さんを囲みながら、一期一会で集まった参加者のみなさんと交流。ここで塚越さんから村のエピソードを1つ。昔、新春ホラ吹き大会で村のお嫁さんたちが「農業先進国であるヨーロッパの本場の農業を見に行きたい!」とホラを吹き、それが村の協力で実現し、村に外国の知識を持ち帰ったことで村の暮らしの発展にも繋がったという”若妻の翼”。「参加者のみなさんにも”ホラ”でもいいので、やってみたいことを話してもらえたら」と塚越さん。

「野菜嫌いだった自分が村の野菜を食べたことがきっかけで、野菜が好きになった!村の野菜の販路拡大など自分が役に立てることを見つけたい」「自分が持っている知見で地方創生に関わってみたい!」「数年後の仕事引退を控え、のどかな場所で暮らしてみたい」と、それぞれ夢を語り合いました。そして親身になって話を聞いてくれる塚越さん。頼れる先輩移住者の存在も間近で感じられる時間となりました。

村民に愛され続けるうどん屋で味わう至福の一杯!

夕食は村民憩いのうどん屋『ゑびす庵』。飯舘村の避難指示解除当日に村へ戻り、いち早くお店を再開させました。

「”ゑびす庵に来ると自分の家がなくても帰ってきた気持ちになる”とみんなに言ってもらえるのが嬉しくて」と話す女将の高橋ちよ子さん。明るく気さくな人柄で愛され、彼女に会いに立ち寄る人も多いのだとか。自慢のうどんは手打ちにこだわったモチモチの太麺で絶品!「うどんはもちろん、優しい味わいの出汁がおいしくて、全部飲み干してしまいました!」という参加者も。食事中は「自分の地域にあるものをどう活かすのか考えるのが面白い!」「村にジップラインがあったらどうだろう?」など、話に花が咲き大盛り上がり!熱々うどんと、ちよ子さんの笑顔で癒され、心まで温まる夜になりました。

【2日目】

野菜たっぷりのおいしい朝食で元気をチャージ

2日目は地域の農業法人エムケーファームの代表を務める菊野里絵さんが作る、おいしい朝食から!今回も自社農園で育てたお米を使ったおにぎり3種と、ナスの揚げ浸しや玉子焼き、ツルムラサキのナムル、キュウリとニンニクみそ、本宮烏骨鶏のフランクフルト、味噌汁など盛りだくさんのメニューを用意してくれました。東京から村に移り住み、会社の経営に携わりながら自ら畑作業もこなす菊野さん。参加者からは「圃場での1日はどんなスケジュールですか?」「コンバインは購入した方がいいですか?」など具体的な質問が飛び交いました。菊野さん自身も農業は素人からのスタートだったのだそう。

「夏場は暑いので朝早くから作業するなど、柔軟性を持って取り組める人が合うと思います。土日も収穫は休めないのでまだまだ人手不足。一緒に挑戦してくれる仲間も募集しています!」と菊野さん。経営者でありながら農作業や加工品作りなど、パワフルに活動する先輩移住者のリアルな声を聞いて、いろんなことに挑戦できる村での暮らしを垣間見ることができました。

いいたてブルーの生産者の元で実際の農作業を体験

地元の野菜たっぷりの菊野さんの手料理でエネルギーチャージした一行は、2日目最初の体験場所、末永瑞夫さんの農園へ。夏でも涼しいという高原ならではの気候で、高温に弱いインゲンの栽培にはピッタリ。質のいいインゲンができると、70 年ほど前から積極的に栽培されてきたのだそう。末永さんの農園もその1つで、現在は”いいたてブルー”と呼ばれる村のオリジナル品種の栽培にも取り組んでいます。末永さんの指導のもと、一つひとつ手作業でインゲンを収穫。「実際になっているところを見るのは初めて」「大きければ良いと思っていたけれど、中間の M サイズが一番高値だと知って驚きました」「おいしそうに見えるけれど、キズや虫食い、病気があるのはダメなんですね」。出荷作業を想定したリアルな農業を体験できて、参加者もなんとなく農業の現場をイメージできた様子。

「私たちも歳だから技術を受け継いでくれる後継者の方が来てくれたら、これほど頼もしいことはないね」と笑う末永さん。最後は袋詰めしてもらって、嬉しいお土産に!収穫の喜びはもちろん、後継者不足など現場の課題も知ることができました。

 

さてお次は、いいたて村移住サポートセンター『3ど°』へ。”1 度目はふらりと遊びに、2 度目は村の誰かに会いに、3 度目からは飯舘村での暮らしや仕事を想像して訪れてほしい”と想いを込めて名付けられた『3ど°』。村への移住希望者を村民や先輩移住者とつなぎ、移住や村での暮らしを様々な角度からサポートしている場所です。

村の移住支援について教えてくれたのは、スタッフでもあり、この村をこよなく愛する大学院生の鈴木敬太さん。「空き家物件情報も日々増えています。家庭菜園も楽しめる畑付きの物件もあるんですよ」。全体説明の後はスタッフが個別の質問にも応じてくれ、参加者の移住の不安も一つひとつ解消。普段の買い物の場所や働き方などについて、参加者もさらに一歩、想像を深めることができました。

お次はお待ちかねの買い物タイム!村の村営住宅に隣接している『いいたて村の道の駅 までい館』は、周辺に子どもの遊び場やドッグランもあり、休日には多くのお客さんで賑わいます。シンボルの花が吹き抜けにキレイに飾り付けられ、飲食コーナーやコンビニも完備しているので、村の生活にはなくてはならない存在です。

農業体験させてもらった末永さんのインゲンや、菊野さんの朝食で登場した細杉今朝代さんの野菜の他、ナツハゼや凍餅など村の農産物や加工品が所狭しと並ぶ店内。今回出会った生産者以外にも、いろんな方々が作る特産品がたくさんあることが分かりました。参加者のみなさんも旅で出会った農家さんの顔を思い浮かべながら、カゴにたくさんお土産を詰め込んでいました。

地元の新鮮野菜がメイン!
珈琲屋が提供する身体が喜ぶ和食バイキング

旅もいよいよ最後の目的地、現役の地域おこし協力隊として活動している横山梨沙さんが店主を務める『コーヒーポアハウス』へ。横山さんは、20 代の頃にワーキングホリデーでカフェの聖地・オーストラリアに渡り、バリスタとして働いていたそう。その学んできた技術を生かし、本格的な珈琲が味わえるカフェでありながら、身体にやさしい和食ランチも提供しています。「お料理の主役は、村の生産者さんの野菜です。バイキング形式でお好みの量をどうぞ」。料理はどれも余計な調味料を極力使わず素材の味が引き立つシンプルな味付け。これはいくらでも食べられそう。参加者のみなさんからも「美味しい」のため息が漏れます。

旅の締めくくりは、参加者それぞれが今回の旅を通して見つけた村の”素敵なもの”や旅の感想を一人ずつ発表し合いました。最初に配付されたカゴには、旅で収穫体験したインゲンやアスパラ、キュウリなど新鮮野菜や、ホーリーバジルティーなど村の特産品がぎっしり!また、「飯舘村の空気を持って帰りたい!」「何より、村で暮らす人たちの情熱や愛を感じたのが一番の思い出」「みなさんの好きなことに全力で取り組む姿がカッコよかった!」との声も。深谷行政区の区長、農家やお店のみなさん、先輩移住者のみなさんがそれぞれに関わり合いながらイキイキと暮らしている姿を直接見ることができて、参加者の中でも、自分のやってみたいことと照らし合わせて、より具体的に移住後の村での暮らしをイメージできたよう。「農作業体験に挑戦したいのですが、どうすれば良いですか」と早速問い合わせる方もいて、一歩踏み出すきっかけにもなったようです。

今回は、村の魅力を深掘りする「つながるミチシル旅」らしく、まずは村の農業を支える水源から巡るディープな旅でした。普段はエリア外の人は立ち入らない大切な場所を知ることで、地域の人たちの想いに触れ、人との関わり合いの中で生きていく村の暮らしを感じることができました。また、村の重要な産業である農業の実際の現場に立つことで、農家の心意気や大変さ、喜びも垣間見ました。移住後の農ある暮らしをより具体的に想像し、さらに、人、地域との繋がりが大切な村であることを実感できた2日間でした。

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